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-MOBIUM(モビウム:移動しながら展示や制作ができるように改造した大型バスのプロジェクト)のスタートはどういうきっかけから始まったのでしょうか?
河村:MOBIUMの展開は2005ごろから開始しました。もともと僕はサウンドアートを中心に制作をしていましたが、フィールドワークをしたり、どこでも展示や制作ができる空間が欲しいなと考えていました。バスだったらメンバーと一緒に移動したり同じ空間で制作ができたりするので、ちょうど良いのではと思った事がきっかけです。
-今乗られているバスとの出会いをもう少し詳しくお聞きしたいのですが、もともとバスの運転免許は持っていたのですか?
河村:バスとの出会いの経緯には、2つ大きいプロジェクトが関連しています。一つはフランス人が4人ぐらい日本に来てツアーをしてまわりたいという話が持ち上った事と、もう一つは、これも同じように日本にドイツ人が来てツアーをしてまわりたいという企画があった事です。移動型の企画展開をちょうど考えていた時期だったので、思い切ってバスを手に入れようと思いました。
-バスでの展開にしかないであろう、魅力や空間のあり方、気づきなどありましたら教えて欲しいです。
河村:普通の車と違って視点が高いので、乗っているとパノラマな風景が見えます。なので、風景を要素として作品制作をする方がいたり、カメラプロジェクトを展開している佐藤時啓さんと以前コラボレーションをしたときは、バスの中を暗室にして、真ん中にディフュージョンフィルム(光を均一にするフィルム)を置いて、そこにバスからの風景を映しながら走行するということをやりました。旅しながら、制作しながら道中を仲間と過ごすということは、なかなか乗用車では難しいし、バスでないとできないかなと思います。
-今回のまちなか芸術祭では中学生とのチョークアートプロジェクトとの連携がありますが、バスを全面的に黒板にしようと思ったのは何故ですか?
河村:初期の企画でいろいろな場所に行って、各地の作家のプロデュースをする中で、バスの外装をカッティングシートやペイントでデザインしていました。何回か施工しているうちに外装がだんだん劣化もしてしまって…どうしようかな…と思っていたときに、黒板のようにチョークで描いたり消したりできたら何回でもアップデートできるし、良いなと思いました。試しに黒板を外装に導入してみたら良かったので、それからずっと運用しています。
-芸術祭でやってみたいこと、これからの豊田での展開について考えていることがありましたら教えてください。
河村:以前とよたデカスプロジェクトに参加しました。人材や素材など豊田のものをうまく取り入れた展開ができると良いなと思います。MOBIUMに来てもらった方がそのまま現場で制作できるようなシステムがあれば、その人の創造性を生かせるし、お客さん同士が繋がったりできるのも良いですね。
-いろいろな人を巻き込んだ展開について、アートのことをあまりよく知らない方をプロジェクトに誘導したり情報を届けたりすることが必要だと思うのですが、河村さんが考えるアートの入り口とは何ですか?
河村:僕の場合は大学の時の先生がダムタイプのことを教えてくださったり、同世代でアート分野が好きな友達がいたりしたので、そういう環境が周りにあるのは大事かもしれないですね。高校の時に音作りをしていたので、その延長でデジタルミュージックやサウンドアートといった表現を展開するようになったのだと思います。casiotone(電子楽器)を改造したりしてました。
-今回の芸術祭のテーマが「知の技術」であり、初の試みとしてブックマーケットを開催します。ご自身の興味のベースが昔読んだこの本によってつくられたとか、幼い頃この本に影響を受けた!という思い出がありましたら教えてください。
河村:家に分厚い百科事典みたいなものが何冊かあって、虫が好きだったので、昆虫図鑑の部分をよく読んでいました。虫の出す音にその頃から興味があって、機械や電気を使わずに虫の出すような音が出せたらすごいな、と思っていたり。その頃の考えは音づくりや音楽表現のベースにあると思いますね。最初はソフトウェアで音を作ったりしていましたが、近年は3DプリンタやArduinoのようなマイコン(電子基板)を使って、物理的に音を出す装置を作ったりしていて、そういった根源があるのかもしれません
[インタビュアー:松永 大和(とよたまちなか芸術ラボ研究生*)]
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10月8日(土)
まちなかセレモニー
9:00-12:00 ライブペイント「MOBIUM×豊田市崇化館中学校」(とよしば)
崇化館中学校美術部とコラボレーションし、オープニングをチョークアートで彩ります。
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*とよたまちなか芸術祭では、「とよたまちなか芸術ラボ」を開講して、アート分野における次世代の実践者(活動の企画運営者となる人材)の育成に努めています。
その中で今回、とよたまちなか芸術ラボの研究生が、お話を聞いてみたい出展者の方にインタビューを行うプログラムを実施しました。