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ステップ・アップ・レクチャー第1弾「建築家に聞く、アートプロジェクトにおける建築利活用について」レポート
Text:吉兼有紀子 Photo : Recasting Club 編集部
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公開レクチャーの様子

今年度からはじまった『Recasting Club』主催、公開ステップ・アップ・レクチャーは、これからのRecasting Clubの活動を進める中で、様々な<目からウロコ>の知識や知恵を、多様なジャンルのゲストから教えていただく連続トークシリーズです。
その第1回目には愛知県を中心に全国で建築を建てるだけでなく、空き屋を仕立てて展覧会等を行ってきたり、あるいは民家を現代的店舗に変えるなど、既存のいろいろな状態の建物をまさしく< Recasting >してきた3名の建築家をお招きし、アートプロジェクトにおける建築の利活用についてお話ししていただきました。

本レクチャーは「とよた市民アートプロジェクト」のディレクターであるNadegata Instant Party(中崎透+山城大督+野田智子)の軽快なMCから始まりました。会場は、昨年来から旧ビジネス旅館を出来るだけそのままの状態に残しながら、市民自らの手で改装し、市民の創造的な場の拠点とするために創られた「とよた大衆芸術センター[TPAC]」です。
今回は元食堂を使用し、建築家の武藤隆さん、山岸綾さん、小野健さんの3名をゲストに迎え、約40名が膝を突き合わせて聞き入りました。これまで3人がやってこられた活動は、空き家、廃校などの空き物件を、それぞれの本質的な持ち味を残したまま、付け足したり、引き算したりいろいろな手法で建物の意味を変えていくものです。

 

左から武藤氏、山岸氏、小野氏

武藤さんは「建物のリノベーションは、その後の活用方法がリノベーションの内容を決める」と語ります。
山岸さんは「建築がアートプロジェクトに使われて起こること、起こってしまうこと」をテーマに挙げ、建築の既存の用途を解釈することの大切さ、消防法に早めにきちんと対応確認することの大事さも語られました。
小野さんはあえて補助金を使わず、自分事として本気でリノベーションする正しさを主張しました。2016年にモデルケースとして「コンテンツニシマチ」という空き屋のリノベーションを行いました。この事例では、飲食店や音楽バンドの拠点など、複合的な施設としました。入居者への負担を少なくした所、様々な人々があつまり出発出来たそうです。従来の市主導の縦のつながりのみでなく、民として地域の横のつながりを作っていこうと努力されています。さらにその建物を介してそこに今までになかったコミュニティーが生まれることを期待しています。例えば稲武+音楽家+パン屋さんなどのように。また、美術館の展示も一部コンテンツニシマチの壁面に飾りました。
ディレクターであるNadegata Instant Partyは、「とよた大衆芸術センター」を単なる建築のリノベーションとしてのみでなく、その建築がどう関わってまちが変化していくかまで見ていきたいと言います。

豊田のまちはなかなかリノベーションが進まないと言われます。その理由は官民が一緒になって本気で悩んでいないことではないかと思われます。大きな力に頼ることばかりでなく、小さな力も集まれば何か出来る力ということを学んでいけば、やりたいことがある人が集まり、何かをやれる時代がやってくるのではないでしょうか。「とよた大衆芸術センター」がその中心となる日は遠くないでしょう。

 

 

<ゲストプロフィール>
○武藤隆
武藤隆建築研究所 代表/大同大学工学部建築学科教授
1967年名古屋市出身。
90年東京藝術大学美術学部建築科卒業、92年東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修了。
92-2002年 安藤忠雄建築研究所を経て、02年武藤隆建築研究所設立。
2010年大同大学工学部建築学科准教授、2013年同教授。
あいちトリエンナーレ2010、2013でアーキテクトを、2016ではシニア・アーキテクトを務める。

○山岸綾
一級建築士/サイクル・アーキテクツ 代表
岡崎市出身。
1996 年早稲田大学理工学部建築学科卒業、98年同大学大学院修了。
原広司+アトリエ・ファイ建築研究所勤務を経て、06年サイクル・アーキテクツ設立。
住宅等の設計のほか、越後妻有アートトリエンナーレで「鉢&田島征三 絵本と木の実の美術館」「奴奈川キャンパス」、
あいちトリエンナーレ2013岡崎会場・2016豊橋会場、東京都現代美術館MOTサテライト2017春・秋等、
芸術祭等の会場リノベーションに携わる。

○小野健
一級建築士/株式会社小野デザイン事務所 代表取締役
とよた市民アートプロジェクト推進協議会 副委員長
1974年豊田市出身。
97年日本大学理工学部建築学科卒業、99年日本大学大学院理工学研究科建築学専攻博士前期課程修了。
99-2003年 村松基安/村松デザイン事務所を経て、04年小野デザイン事務所設立。
建築設計からグラフィックデザイン、プロダクトデザイン、まちづくり事業まで幅広く活動。
16年民間のまちづくり会社STREET PARKPROJECT を設立し、コンテンツニシマチを運営。

UPDATE : 2018.07.26
Outline
ステップ・アップ・レクチャー第1弾「建築家に聞く、アートプロジェクトにおける建築利活用について」レポート

開催日:6月23日(土)17:30~19:30
会 場:とよた大衆芸術センター[TPAC](旧・波満屋旅館)

主 催:とよた市民アートプロジェクト推進協議会
企 画・ディレクション:Nadegata Instant Party (中崎透+山城大督+野田智子)
広 報・デザイン:LIVERARY

Text:吉兼有紀子(とよたデカスプロジェクト リポーター)

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