Recasting Club メンバーのコラムをご紹介します。
「出会い」をテーマに募集しました。
「Recasting Clubとの出会い」 森岡まこぱ
2018年、家族の仕事の都合で豊田市へ引っ越しが決まりました。短期間だとは聞いていたけど、 実家のある岐阜からも微妙に遠く、知り合いもいない。正直、気が重かったです。 「名古屋だったら良かったのに…」と何度も思いました。その時の私には豊田市は魅力的な街で はなかったのです。
そんな時に、たまたまNadegata Instant PartyのSNS投稿からRecasting Clubの存在を知りま した。アートに関わる人をゲストに招く「ステップアップレクチャー」に惹かれ、初めてTPACの 門をくぐり、そして、これがきっかけで私はRecasting Clubのメンバーになりました。
“まちなかにひっそりと佇む、 一旦は役目を終え、眠ったままの建物や場所に もう一度、「場/クラブ」としての役を当て、光を当ててみる。”
今思えば、当時、私はRecasting Clubコンセプトを理解していなかったのではないでしょうか。 もちろん、理解していなくても全然問題なく参加できるんですが。
Recasting Clubに参加してようやくわかったのが、ここは一般的なアートのボランティア活動とはちょっと違うということ。活動拠点であるTPACの大掃除の後にみんなで流しそうめんをしたり、 TPACでRecasting Clubメンバーたちによるアートイベントを実現したり、そうそう、豊田市老舗五平餅屋の復活もありました。 TPACで起きることは、地域で行われる行事に似ているけれど、全部、世の中の枠からちょっとは み出している。そんな印象を持ちました。
Recasting Clubメンバーには、豊田市を拠点に活動するアーティスト、学生、趣味の延長で活動 している人。みんな関わり方も、この場所に求める目的もいろいろ。 大掃除にしろ、流しそうめんのセッティングにしろ、イベントに対して積極的に関わり、楽しんで いる姿が印象的でした。 おそらく、メンバーのみなさんは自分たちが好き勝手できるTPACという場所と、それが許される Recasting Clubの関係性を大切に思っているのではないでしょうか。
そして、Recasting Club2018年の集大成「HYBRID BUNKASAI」は、そんなメンバーの個性 が発揮されたイベントでした。 多様性があり、朗らか。まさにBUNKASAI(文化祭)としか形容できないイベントでした。
ただ、ただ、その場にあるアートを楽しむ。みんなの作品を見て感想を述べて、笑いあう。会場 は、健全で、とても優しい空気が流れていました。 誰だって表現したらいい、楽しんだ方が勝ち。アートや表現活動は特別な人のものではないんだ な。ふと、そんな思いが溢れてきました。
そして、誰でもないみんなの自由な表現を支えてくれているのが、Recasting Clubという場なの かもしれません。
現在、私は豊田市ではなく、もともと住んでいた街で暮らしています。
でも、ふとした瞬間に、豊田市美術館は今どうしているかなとか、西町のカフェでモーニング食べたいなとか、そんなことを考えます。 豊田市を出たけれど、まだどこかつながりたくて、あいちトリエンナーレ2019開幕後に「子どもと一緒でも安心 あいちトリエンナーレ2019 豊田会場周辺マップ」というGoogleマップを作った りもしました。 (エムパークのリブレット閉店はめちゃくちゃショックなニュースでした)
Recasting Clubとは、2018年の「HYBRID BUNKASAI」までのごく短期間の参加でしたが、 Recasting Clubがあったからこそ、豊田市の面白さに気づくことができたんだと思います。 アーティストも、市民も、市役所の人も、朗らでいられる場所。そして、表現が許される場所。
あれから時間が経ち、正直、メンバーの名前もおぼろげになりつつありますが、 彼らがあの場所で表現していたもの、それは今もはっきりと覚えています。
森岡まこぱ(もりおかまこぱ)
岐阜県郡上市生まれ。現在、静岡県御殿場市在住。フリーランスとして雑誌や書籍、Webなどの 企画・編集・執筆を行う。
https://note.com/makopa